Constant □
微エロ有  克哉=眼鏡、<克哉>=ノマ
生まれて初めての二次創作だー




○月×日 月曜日 晴れ
 朝一で現行商品改良のための会議。
 お客様相談室から提出された、先週分の改善要望はトータルx件でいつもより多い。商品クレームはなし。
 一室製品分の改善要望は全て持ち帰り検討。
 
 来週月曜からの大阪出張のスケジュール微調整。
 工場視察は二日目に変更。新幹線チケット、ホテル予約手配。
 
 ああ体がだるい。
 昨夜は結局何時に寝たんだろう。
 土曜丸一日と日曜の午前中いっぱいまで散々ベタベタして、やっと解放されたと思ったら更に夜もなんて。
 あいつはなんでああバカみたいにいつもいつも発情してるんだ?
 それで今朝起きられないとか。会議なのに遅刻しそうとか。
 もう。バカ眼鏡。エロ眼鏡。色情狂。バカ。バカ。
 眠い。だるい。今週一週間はやらない。絶対やらない。

○月×日 火曜日 晴れ
 A誌コラボレーション企画の第三回打ち合わせ。
 今回初めて顔合わせした人のプレゼンがうまい。勉強になる。
 パッケージはやっぱりピンクで細身のほうがいいかな。
 
 お昼は久しぶりに社食。焼き魚定食!

 それにしても体がだるい。
 昨日頭の中でバカバカ言ってたのがバレた。
 いや、オレの考えてることはあいつに筒抜けなんだから、バレるもなにもないけど。
 うちに帰るなり、随分バカバカ言ってくれたじゃないか、覚悟はできてるだろうな? ってわけわかんないこと言いながらなぜか押し倒してきたから、バカにバカって言って何が悪いんだよとか必死で抵抗した。でもだめだった……。
 もうやだ。あ、ほら、頭も体もどうにもうまく働かないからもうこんな時間。
 週の初めから残業はしたくない。ん、でも、残業して遅く帰ったほうがじゃあ早く寝ようってなるかな。
 ……なるわけないか。はあ。

○月×日 水曜日 晴れのち曇り
 なるわけなかった。
 あいつは本当に冗談抜きで大げさじゃなくどこかおかしい。 
 バカとか色情狂とかそういう問題じゃない。
 毎日毎日毎日毎日! このケダモノ!! いや、ケダモノのほうがまだ理性があるんじゃないか?
 全然仕事にならない。
 幸い今日は打ち合わせも来客予定もなくてデスクワークだけで、あとの週末木金はあいつが表だ。
 処理できない仕事はあいつに押し付けることにする。
 だって、仕事にならないのはお前のせいなんだからな!

○月×日 木曜日 曇り
 改善要望に対する改善案A~E及び他製品改良素案作成、提出。
 A誌コラボ企画パッケージデザイン三点送信。
 プロジェクトBラボ上がり配合テスト結果集約、前回テスト結果と統合、改定資料作成。
 新規プロジェクトLマーケティング結果集約、他種マーケティング調査依頼。
 購買部、商品管理部と打ち合わせ。
 
 進行中のプロジェクトは全て順調。急ぐ案件もなし。

 たったこれだけの作業にあいつはどれだけ時間がかかるんだ。
 体がだるい? 仕事に集中できない? 言い訳にすらなってない。仕事を舐めるな。
 なにがケダモノだ。なんだかんだ言って、最終的にもっともっとと腰を振って俺を離さないのはお前のほうだろう?
 夜通し淫乱なお前を相手にして、指一本動かせなくなった体を世話してやってる俺の身にもなれ。
 あー、お前が仕事を押し付けたせいで疲れたな。当然、この対価はきっちり払ってもらうぞ。

○月×日 金曜日 曇り
 大阪出張のスケジュール、持参データ最終確認。
 他雑務処理。

 終業間際、御堂に食事に誘われた。
 本当は昨日のうちにあいつのほうを誘うつもりだったんだろう。昨日今日と俺の顔を見た途端、あからさまにがっかりしていたからな。
 今日も眼鏡をかけてきたから誘うのはよそうと思ったが諦めきれず、一か八か誘ってみた、というところか。
 お生憎様、当然断ったが。
 恐らく、月曜からどことなく体調が優れなそうだということを見抜かれていたんだ。
 それで、私がうまいものでも食べさせて元気をつけてやろう、か? あの変態部長め。
 御堂に隙を見せるなと何度言ったらわかるんだ。
 もういい加減俺も飽き飽きしてきたが、セクハラ部長から身を守るためだ仕方ない。今晩もきっちり教え込んでやる。


 ∞ ∞ ∞

 週初めには爽やかな青が広がっていた空も週末に向かうにつれ濁りだし、金曜の夕方には濃い灰色に変わり今にも雨が落ちそうな雰囲気だ。
 帰路に着く電車の中で、最近週末になると天気悪くなるよねー、せっかく出かけようと思ってたのにさーなどといった会話が聞こえたが、週末は家に籠るものだとする克哉にとっては、晴れようが雨が降ろうが嵐になろうがどうでもよかった。
 克哉がマンションのエントランスに入った途端、まるでそれを待っていたかのように雷鳴とともに激しく降りだした雨にも何も思うこともなく、いつも通り郵便受けを確認してから、ちょうど一階に止まっていたエレベーターに乗り込んだ。
「ただいま」
「ただいまー……ってお前ー!」
 玄関がガチャリと音を立てて閉まったと同時にふたつに分かれたもうひとりの自分が、耳をつんざかんばかりに怒鳴りつけてくる。
「帰るなり大声出すな、うるさい」
「うるさいじゃない! いい加減にしろよ!」
 ネクタイを緩めながら廊下を抜けてリビングを横切り寝室に入る。半身も同じことをして後ろから追いかけてきながら、キャンキャンと吠え続けている。
「御堂さんのこと変態とか思ってただろう!」
「ふん、事実だろう」
「ほんとバカじゃないか!? 御堂さんは純粋に厚意で誘ってくれてるのに! そんなに暇じゃないんで、って失礼にも程がある!」
 もうひとりの自分、<克哉>は克哉と違って、相手に体を明け渡している時の記憶は少し曖昧だ。
 しかしながら、ひとりの佐伯克哉が家に帰ると分裂して心も体もふたつのふたりの佐伯克哉になるという、誰にどう説明しても絶対に信じてもらえぬであろう状態になって暫く経つ今では、<克哉>も克哉でいる時の思考や言動、行動を己のこととして理解できるようになってきた。
「下心丸出しの好意の間違いだろう。それに、今日もまた馬鹿なお前に自己防衛のなんたるかをじーっくり教え込まないといけないからな、暇じゃないのも事実だ」
「言ってる意味がわかんないよ、バカ眼鏡!」
「お前そのバカ眼鏡って言い方気に入ってるだろ」
「ふん! 事実だろう!」
 先程克哉が言った同じ言葉を口調を真似て、なぜか腰に手を当て胸を張り得意げに返してくる。
「さっきから叫びすぎだ」
 スーツを部屋着に着替えながらも止まらない罵倒にうんざりするが、子供のように感情を向けてくる様にどこか愛おしさも込み上げてきて、俺も大概こいつに甘すぎるなと思いながら<克哉>の腕を引きその体をしっかり抱き込んで顎を捉え唇を合わす。
 あっという間のことで、何をされているか理解できず呆然として抵抗もしないその口腔に、舌を捩込み搦め捕ってきつく吸い込む。
「んっ……んっんっんっ……んー! ……んんんーーーー!!!」
「っ! ……ちっ」
 柔らかな舌をたっぷりと嬲って、上顎を舐め頬の粘膜をくすぐってやると、<克哉>はされるがまま蕩けそうに甘い声を一瞬上げたが、我に返ったのかじたばたと体をもがき、無遠慮に暴れている舌先をがぶりと強く噛んだ。
 克哉の口の中に、僅かに鉄の味が広がる。
「血が出た」
 唇は離したものの、体は拘束したまま至近距離で睨みながら憎々しく言うと、負けじと同じ目線で睨み返してくる。
「自己防衛なんだろっ」
「ほぉぉ、いい度胸じゃないか。そうだな、その調子でちゃんと身を守れるのか、試してやらないとな」
「やってみろよ!」

 ああ、本当にこいつは馬鹿だな――。

 克哉は心の底からしみじみそう思ったが、心も体も分かれた<克哉>はそんなことには気付かなかった。


「んっ、やっ、やだ……」
「そうだ。ここをこうされたら、なんて言うんだ?」
 相手が御堂でなくとも、他人に『ここ』を『こう』されている時点で自己防衛が成り立っていないし、そんな状況になることがまずあり得ないと克哉は思うが、ほだされ快感に流された<克哉>であればさもありなんと想像できてぞっとする。
「あっ、そこっ、やだぁっ」
「ん、いい子だ」
 完全に誘導尋問だが、それでも<克哉>が克哉の意図した通りに応えたことに満足する。
 そのまま、上から滴る先走りにたっぷり濡れたひくつくそこに指を差し入れゆっくり掻き交ぜると、<克哉>は喉を見せて高い嬌声を上げる。
「ほら、よくできたいい子に――ご褒美だ」
 十分に蕩かせてやってから指を引き抜き、大きく張り詰めてはち切れんばかりになっている自身を軽く扱きながら見せびらかすと、<克哉>がごくりと喉を鳴らした。
「欲しいか?」
 克哉の問いに、<克哉>は眉尻を切なげに下げ、快感の涙に濡れた瞳で克哉を見つめて、唇をぎゅっと噛み締め何度も首を縦に振る。そんな仕草がかわいくてたまらない。
「ご褒美をやるんだから、今教えたことは、忘れるんじゃないぞ?」
 優しく甘やかした言い方になった自分に心の中で苦笑しながら、<克哉>の腰を引き寄せて浮かせ、熱を待ち侘びてぱくぱくと口を開けるそこを先端で軽く何度かつついてから、一気に奥まで沈め根元まで飲み込ませる。
「は、あああっ! やっ……やああっ」
「んー? 違うだろ? 俺にこうされたら、なんて言うんだった?」
 緩急をつけて好き勝手に責め立てながら、これもまた何度も教え込んだことを求める。
「あっあっあっ! んっ……い、いいっ」
「そうだ……いい子だ。今日は優秀だなぁ、<オレ>」
 無意識に腰を振りながら素直に快感を表現する<克哉>が愛しくて、抱えた膝裏を更に押し付け、もっと奥まで深く繋がってもっともっと気持ちよくするために、体重をかけて最奥まで打ち込んで散々に抉ってやる。
「んあっ! い、いっ、いい、よぉ、<俺>ぇ……」
 我を忘れて<克哉>が啼く。
 熱く蕩けきったその中は、打ち込めば奥深くへと誘うようにいやらしく蠢いて絡み付き、引き抜けば離さないというように襞と襞とがぐちぐちと絡み付く。
 もっと翻弄したいのに、何も考えられなくなるほどの快感に、克哉もただ夢中で腰を振るしかなくなる。
「っ……ふ、この、淫乱」
 詰る言葉を口にすれど、本当はもうそんな余裕もない。
 気持ちいい。愛おしい。それだけだ。
 <克哉>が腕を伸ばしてキスを強請る。克哉は唇の端を上げて、それに応えてやる。
 繋がれる場所は全て繋がっていたいとでも言うように、指を絡ませ舌を絡ませ熱を絡ませる。
 今はまだ金曜の夜が始まったばかりだ。無我夢中になるのもいいだろう。
 虐めて焦らして強請らせるのは、土曜でもいいし日曜でもいい。時間はいくらでもある。
 
 いっぱい気持ちよくしてやるから、一緒にいっぱい気持ちよくなろう。

 体も心もひとつになったふたりの克哉は、寸分違わず同じことを思いながら、互いの欲望を絡ませ合うことだけに深く溺れる、長くて短いいつもの週末を過ごした。
2012.03.20